2012年1月18日、ブラジル中央銀行は金融政策決定会合において、市場予想通り政策金利を0.5%引き下げ、年率10.5%とすることを決定しました。利下げは4会合連続となりました。
利下げ継続の背景には、ブラジル国内外の景気減速懸念があります。今回の金融政策決定会合後の声明で同中銀は、「より制約的な国際環境の影響を現時点で緩和するために、政策金利を緩やかに調整することは、インフレが2012年の目標に収束していくシナリオに一致する」という、前回と同様の文言を使用しました。
一方で、ブラジル政府も昨年12月1日に、総額28億レアル規模の減税を発表するなど、景気を下支えする姿勢を示しています。この減税対象には、家電製品などに対する工業製品税も含まれており、2008年の金融危機に対応し、政府が発動していた減税を彷彿とさせるものです。
このように、財政・金融両面から景気刺激策が発動される中、ブラジルの11月の小売売上高は前月比+1.3%、同月の経済活動指数は同+1.15%と、ともに市場予想を上回り、足元では個人消費の堅調さに後押しされる形で、経済活動にやや好転が見られていました。
12月のインフレ率は市場予想を下回り、同中銀の目標上限である6.5%に一致しましたが、市場ではなおインフレ圧力に対する警戒感があります。このような環境の中、今後も国内景気と物価を考慮した金融・財政政策の行方が注目されます。
特に短期的には、ユーロ圏債務問題の動向など国外要因とともに、ブラジル政府が来月にも発表すると思われる、予算削減の規模について市場の注目が高いようです。
金融政策においては、今後も「緩やかな利下げ」が想定されており、直近の同中銀によるエコノミスト調査によると、2012年末までに政策金利は9.5%に引き下げられると予想されています。
利下げされたとはいえ、相対的に金利が高いことに加え、資源国通貨であるレアルには、海外からの資金流入が期待され、基調としてレアル高で推移する可能性が高いと思われます。

(資料:「ブラジルの利下げについて」―野村アセットマネジメント、大和住銀投信投資顧問)
(インタビュー)
「ブラジル、年4~4.5%成長続く」 最大手銀幹部に聞く (2012/1/18 日本経済新聞)
利下げ「12年前半で9.0%まで」
欧州債務問題などを背景に2011年半ばに急減速したブラジル経済。足元の景気は持ち直しつつあるが、世界経済減速の影響を受け、12年の回復も緩やかなペースにとどまるとの見方が多い。ブラジルは再び高成長の軌道に戻れるのか。中央銀行による利下げはいつまで続くのか。ブラジル経済と金融政策の見通しを同国の最大手銀、イタウBBA銀行のチーフエコノミスト、イラン・ゴールドファイン氏に聞いた。
――ブラジル経済の現状は。
「11年半ばまで過熱気味だったブラジル景気は中銀の金融引き締めと世界的な景気減速の影響で落ち着いた後、一段と減速し、同年7~9月期に前期比でマイナス成長に陥った。11年通年の実質国内総生産(GDP)伸び率は前年比2.7%と10年(7.5%)から大幅に縮小する見込みだ。12年の伸び率も3.5%にとどまると予想する。短期的には景気はすでに底入れしたとみている。11年10~12月期以降は製造業や個人消費など内需が緩やかながら回復しているからだ」
――利下げはどこまで続くのか。
「12年前半にある4回の会合で0.50%ずつ利下げし、政策金利を9.00%まで下げると予想する。世界的な景気減速が重荷となり、12年の景気回復も緩やかになりそう。中銀は政策金利を同国としてはやや緩和的な水準にして、景気の刺激を狙うだろう。年後半は金利据え置きに転じ、政策効果を見極める可能性が高い」
「最大のリスク要因は欧州債務問題だ。今後さらに深刻化する可能性も高く、状況次第ではブラジル中銀が9.00%を下回る水準へ政策金利を引き下げる可能性もある」
――金融政策以外の景気刺激策はどうか。ブラジル政府は11年11月以降、家電購入減税や自動車ローンなど融資規制緩和による内需刺激策、海外資本流入規制の一部緩和などを打ち出した。
「政府は財政面での追加刺激策について、今後は慎重になるだろう。(利下げ後も)政策金利がなお国際的に非常に高い水準にあるため、政府・中銀は景気を刺激する手段として財政出動より利下げを優先するとみている。景気減速に伴い、12年の消費者物価上昇率は前年比5.2%とインフレ目標の範囲(2.5~6.5%)内に収まる可能性が高い。利下げするためのハードルは低く、刺激策の大部分を金融政策が担うだろう。欧州や中国など国外からの大きなショックがなければ、海外資本流入の規制も大きく変えることはなさそうだ」
――長期的な経済見通しは。
「今後10年の実質GDP伸び率は年4~4.5%と潜在成長率(4%前後)をやや上回ると予想している。石油など資源関連の設備投資が続くうえ、14年のサッカー・ワールドカップや16年のリオデジャネイロ五輪の開催に向けてインフラ整備や企業買収なども活発化する。今後10年の海外からの直接投資の対国内総生産(GDP)比率は3%程度に上昇するとみている」
「経済成長に伴い、消費に積極的な中流層が増えている。こうした新たな消費者は4500万人に達する(10年の同国人口は約1億9000万人)とされる。投資に加えて、旺盛な個人消費も経済をけん引するだろう」
――世界の投資対象の中で、ブラジルをどうみるか。
「欧州や日本の景気低迷は今後も続きそうで、当面は米経済の大幅な成長も見込めない。ブラジル経済は外部要因に左右されやすく振れも大きいが、成長基調が当分続くのは間違いない。経済が成長する場所には投資資金が集まり、金融・株式市場も成熟する。多少の利下げがあっても金利水準は世界的にみればなお高いこともあり、日本人を含む海外投資家にとってブラジルは魅力的な投資先だと思う」
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