欧米先進国の年金基金がヘッジファンドへの投資を拡大している。株式相場の長期低迷などで運用成績の不振が続いているためだ。世界のヘッジファンドの運用残高(約2兆ドル)に占める年金など機関投資家の比率は50%を超えた。空売りなどを用いて相場下落局面でも収益をあげるヘッジファンドの活用で運用成績の底上げを目指すが、リスクの高い投資により損失が膨らむ可能性もある。
テキサス州教職員退職年金基金は、今年6月時点で運用資産総額1099億ドルの4%に当たる43億ドルをヘッジファンドに配分。投資額は過去5年で2.6倍に増えた。
全米最大の公的年金、カリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)は9月から新設ファンドヘの出資に踏み切った。8月末時点で運用資産2358億ドルのうち54億ドルを配分。実績のあるファンドだけでなく、新設ファンドに運転資金を提供する「出資」で収益向上を狙う。
カナダのオンタリオ州教職員年金基金も運用資産(1047億ドル)の11%の114億ドルをヘッジファンドに振り向けた。スウェーデン、ノルウェーなど北欧諸国の機関投資家(運用資産約6000億ドル)調査によると、32%が今年中にヘッジファンド投資を増やすと回答。「減らす」との回答は2%にとどまった。
米シティ・プライム・ファイナンスの調べによると、世界のヘッジファンドの運用資産のうち、年金基金を主力とする機関投資家の資金は3月末時点で1.1兆ドル。同業界の運用資産に占める機関投資家比率は2002年の20%から53%まで上昇し、かつての主要顧客だった富裕な個人投資家(8060億ドル)と逆転した。
公的年金基金のヘッジファンド投資を地域別に見ると、北米が70%、欧州が27%で欧米の年金が大半を占める。ただ低成長・超低金利で先行した日本の年金基金も同投資拡大に動いており、年金運用は世界的に転機を迎えつつある。
安定運用が原則の年金基金は株や債券の長期保有を重視。高リスク投資とされるヘッジファンドには消極的だった。だが、カルパースの過去10年の運用利回りは年5.3%で、年金給付に必要な予定利回り(7.75%)に遠く及ばない。
カルパースは今春「運用低迷を踏まえ予定利回りを0.25ポイント引き下げ7.5%とすべきだ」との専門家の意見具申を却下。予定利回り引き下げは、年金給付カットなどに直結するためハードルが高い。実際の運用成績向上が切実な課題に浮上しており、オンタリオ州基金は「年金の(支払いに備えた)積み立て不足を抑えるためヘッジファンドに投資している」という。
足元の金融市場は不安定な動きを示しており、運用成績が悪化したヘッジファンド業界への資金純流入は今年6月末をピークにやや細っている。だが先進国の低成長・超低金利の長期化で、債券や株式による運用で収益回復は見込みにくい。年金基金とヘッジファンドの急接近は今後も続く見通しだ。
(2011年11月17日 日本経済新聞夕刊)
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