米国だけではない、日本も格下げカウントダウン
(2011年8月1日 日本経済新聞電子版 グローバルOutlook)
内外の関心は、8月2日に期限が到来する米連邦債務上限の引き上げ問題に集中している。民主、共和両党によるせめぎ合いが続くなか、ぎりぎりまで予断を許さない。債務の元利払いができなくなるデフォルト(債務不履行)に陥る最悪の事態は、何とか回避できるだろう。いや、回避できてほしい、というのが、経済活動に携わる人々の偽らざる本音だ。
同時に、米国債の初の格下げはやむを得ないという雰囲気も漂う。その結果、為替市場ではドルが売られ、円が実力以上に買われている。だが、欧州、米国と回ってきた政府債務への不信の嵐は、いつ日本に向かってもおかしくない。
忘れてはいないか。米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が4月27日に、日本国債の格付け見通しを、「弱含み(ネガティブ)」に引き下げていることを。

震災や原発事故を受け、日本の財政がこれまでの予想より悪化する懸念があると、S&Pは指摘した。その後、事態は一向に好転していない。
S&Pは今年1月、日本の国債の格付けをAAからAAマイナスに引き下げたばかり。短期間のうちに再度格下げされると、今度はAプラスとA格の格付けとなる。
一方、米ムーディーズ・インベスターズ・サービスは5月31日、日本国債の格付けをAa2(AAに相当)から引き下げ方向で、見直しの対象にした。3カ月後をメドに格下げの最終決断するという。期限は8月末ということになる。
政府は7月29日、震災の復興基本方針を決めたが、肝心の財源については民主党内で増税反対論が噴出し、明確な方針が示せなかった。29日に開いた党の小委員会の出席者約50人のうち、増税賛成者は2~3人どまりという。これでは国債格下げの条件を与党民主党が整えたようなものだ。
今国会の会期末は8月31日。折しも、ムーディーズの格下げ決定時期と重なる。菅政権が末期症状を呈し、税財政運営の迷走が続くようだと、ムーディーズが国債を2段階以上格下げし、A格にするかもしれない。
改めて問われるのは国債のリスクの掛け目だ。国際決済銀行(BIS)の自己資本比率規制によれば、AA格までの国債のリスク掛け目は0%だが、A格は20%のリスク掛け目となる。
自国通貨建ての国債には、その国の当局が別の扱いをすることも認められる。そこで日本国債の95%を保有する国内投資家については、リスク掛け目ゼロのままだろう。
しかしながら、外国勢が保有する日本国債については、リスク掛け目が20%になってしまう。逃避通貨として円を買ってきた外国人投資家が、円を売りに回ることも考えられる。
今週は円が最高値に迫るなか、政府の円売り介入が市場に催促されると同時に、金融政策決定会合での日銀の対応にも関心が集まろう。それでも、米国発の夏の嵐がいったん静まれば、その後やって来る日本国債と円の真贋(しんがん)判定の時期は意外と近いかもしれない。
コメント