昨今の投資信託業界の話題をさらっているのが、三菱UFJモルガン・スタンレー証券が発売する「dbX-ウィントン・パフォーマンス連動オープン」。本家本元のWINTON FUTURES FUND(ウィントン・フューチャーズ・ファンド)と、はたしてどちらが有利なのか? 徹底比較してみます。
(グラフ・図表出所:三菱UFJモルガン・スタンレー証券)
Ⅰ.本家本元「ウィントン・フューチャーズ・ファンド」はオフショアファンドの雄
1)ウィントンの人気の秘密―上げ相場でも下げ相場でもリターンを上げる
ウィントン・キャピタル・マネジメント・リミテッド(以下「ウィントン社」)は、225億ドル超の運用資産残高(2011年6月末現在)を有する、世界最大のコモディティ・トレーディング・アドバイザー(CTA)の一つです。
中でも「ウィントン・フューチャーズ・ファンド(WFF)」はウィントン社の旗艦ファンドの地位を占めています。同ファンドは世界の先物市場、オプション、現物株式及びCFD(差金決済取引)を主な投資対象として、複利での成長を通じた長期的な資産価値の増加を目標としています。
これはマネージド・フューチャーズと呼ばれる、ヘッジファンドの運用戦略の一つ。株式指数や債券等の金融先物から、エネルギーや農産物を含む商品先物に至るまで、各セクターを幅広く網羅することにより、高度な分散投資を追求します。
さまざまな先物に投資するスタイルで、世界各国100以上の市場を通じてシステム運用を行っています。トレンドフォロー戦略をとり、相場のトレンドを追いかけて収益を追求し、先物の買いだけでなく、売りも活用しますので、相場の上げ局面と下げ局面どちらの相場でも収益を狙えるのが一番の魅力です。
簡単にいえば、「株が下がると思えば、先に売りを出す」「上がると思えば先に買う」。どんな局面でも「安く買って、高く売る」戦略を徹底しています。
2)珠玉のヘッジファンドの運用手法―マネージド・フューチャーズ
マネージド・フューチャーズの利点をまとめると以下のように整理できます。
① さまざまな経済環境においても利益を追求することが可能な戦略→株式指数、金融商品、農産物、貴金属、非鉄金属、通貨やエネルギーといった、世界中のさまざまな市場に投資することで、リターンの獲得およびリスクの低減を目指す
② 価格トレンドを利用する→マネージド・フューチャーズにおけるテクニカル取引は、価格トレンドを追い、計量分析を行うため、コンピューター・プログラムが用いられることもある
③ ポートフォリオのリスクの低減が期待できる→過去において株式や債券に対して長期的に低相関、もしくはややマイナスの相関関係があったことから、ポートフォリオのリスク低減の効果が期待できる
マネージド・フューチャーズの分散投資は以下のような図のイメージになります。

このような利点を反映して、マネージド・フューチャーズの運用資産は増加し続けています。

マネージド・フューチャーズが長期的に比較的安定したパフォーマンスを上げるに適していることは、以下のグラフをみると一目瞭然です。

他の資産と異なる値動きとなる傾向があり、他の試算と組み合わせて保有することで、ポートフォリオのパフォーマンスが安定する効果が期待できます。

3)ウィントンの人気の秘密―運用者は〝天才〟ファンド・マネジャー
「ウィントン・フューチャーズ・ファンド」は、ほとんど負けなしの実績に加え、17%近い年率利回りから、各国年金基金や政府系ファンド、財団、個人富裕層がウィントンの主な投資家となっています。円建て投資ができるので、為替の影響を受けずに投資ができる点も、ウィントンの見逃せない魅力です。

同ファンドは統計分析に基づくアルゴリズムを用いた高度な分散取引システムを採用しています。ウィントン社の運用システムは、特定市場における有利な取引条件や資産価値の上昇に依存しないように設計されています。また、リスク管理手法は、現在も継続的に改善され続けています。

「ウィントン・フューチャーズ・ファンド」の1997年の設定以来の累積収益率は701%、年間収益率は16.9%、年率標準偏差は18.3%。世界的規模の経済危機を乗り切ったこの運用成績は、見事というほかはありません。

ウィントン社は約14年の運用実績を有しており、ロンドンを拠点に225億ドル(約1兆8000億円)超の資産運用を行うヘッジファンドの最大手。

設立は1997年2月。会長として約200名の従業員(内約100名は研究員)を率いるのは、運用の〝天才〟の名をほしいままにするデイビッド・ウィントン・ハーディング氏です。
同氏は1982年にケンブリッジ大学の自然科学理論物理学科を首席で卒業。1987年にマネージド・フューチャーズ・ファンドのAHL社を共同設立。1997年に優れた運用システムを構築するために、応用統計学などを用いた研究開発を重視するウィントン社を設立しました。

研究員は博士・修士号取得者で構成される専任研究開発チームに所属。その専門分野は「オペレーション研究」「統計学」「気候学」「保険数理学」「天体物理学」「金融工学」「神経言語学」「機械学習」の博士号・修士号と実に多彩。また、ロンドン、オックスフォード、香港に、リサーチに特化した研究施設を保有しています。
この研究チームが開発したのが、「システマティック取引」というもの。「運用者の判断に依存することなく、客観的に将来発生する可能性のある事象と発生確率を計算。幅広い投資対象の長期にわたる情報を統計的に分析し、将来発生しうるトレンドと、その発生確率をもとに運用する」というものです。多彩な分野の研究者を抱えてこそ、初めて可能な運用手法と言えるでしょう。
■受賞履歴
・2008年 ヘッジ・ファンズ・レビューより10年超にわたってリスク調整後のリターンが最も優秀なヘッジファンドに与えられる賞を受賞
・2009年 同賞再受賞
・2010年 ヘッジ・ファンズ・レビューよりヘッジファンド業界に大きな貢献をもたらした人に与えられる賞をハーディング氏が受賞
Ⅱ.三菱UFJの「ウィントン・パフォーマンス連動オープン」の課題
1)連動の仕組みはブラックボックス
対する、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の「dbX-ウィントン・パフォーマンス連動オープン(ケイマン諸島籍)」(当初申込期間:2011年8月22日~10月3日まで、設定日:2011年10月5日、継続申込期間2011年10月14日以降)。どの程度本当にウィントンと連動するのか? その仕組みは? 手数料は? 疑問は尽きません。
この商品はあくまでも、「ウィントン社が投資助言するファンドの投資成果を享受することを〝目指す〟」もの。どのような仕組みで、どの程度、本当にウィントン社のファンドと連動するのでしょうか?
このファンドは「パフォーマンス・リンク債(「本債券」)」への投資を通じて、ウィントン社が投資助言する「dbX-CTA5ファンド(投資先ファンド)」のパフォーマンスへの投資機会を提供する仕組み(なお、「dbX-CTA5ファンド」の運用方針は、「ウィントン・フューチャーズ・ファンド」と同様。ただし、パフォーマンスは異なる)。

やはり疑問は、はたして「本債券」と「投資先ファンド」である「dbx-CTA5ファンド」がどの程度本当に連動するのか? というところに行き着きます。
どの程度うまく本当に連動するかについては、「本債券」と「投資先ファンド」の関係の肝心の部分がブラックボックスです。本店営業部の担当者にも説明を求めましたが、あまり満足のいく回答は得られませんでした。この点については、今後のお手並み拝見というしかないでしょう。
3)過去の事例ではコピー商品の限界を露呈
「dbX-ウィントン・パフォーマンス連動オープン」も必ずそうなるとは言い切れませんが、これまでの事例をみる限り、海外ヘッジファンドに連動する日本製コピー商品は、あまり芳しい成績を残していません。
コピーとオリジナルで運用実績が異なる理由としては、
① コピーには証券会社の中間マージンがのっているから
② コピーは、オリジナル100%ではない「混ざり物だから」
などが考えられます。
少なくとも言えることは「日本製コピーは海外オリジナルには劣る」ということです。
3)嵩む中間マージン―高い手数料がネック
契約者とウィントン社の間に、①日本における販売会社②国際投信投資顧問(為替ヘッジ担当)③ドイチェ・バンク・ルクセンブルグ(本債券発行担当)、という三者が入るわけで、その分余計な費用(人件費、オフィス代、日本語資料、日本の証券会社や銀行に支払う費用など)がかかることは確実です。
これだけで本物のWWFより、少なくとも毎年1~2%程度はパフォーマンスが低下するものと推測されます。
なお、購入手数料は
・4.2%(5000口未満)
・3.15%(1万口未満)
・2.10%(5万口未満)
・1.05%(5万口以上)
となっています。
購入は100口以上1口単位で、円建ては1口10000円、米ドル建ては1口100米ドル、豪ドル建ては1口100豪ドルです。円建ての場合、5000万円未満の場合は5000口未満の購入手数料が適用されますので、実質的にほとんどの投資家にかかる手数料は4.2%になるでしょう(800万円以上投資できるなら、ウィントン・フューチャーズ本体に投資できる)。
また他にも、
・管理報酬:年間2.84%
・成功報酬:HWM20%(HWM=ハイ・ウォーター・マーク:過去の基準価格を上回った幅の20%)
がかかります。
これらは決して安い手数料だとは言えません。コストパフォーマンスで比較すれば、「ウィントン・フューチャーズ・ファンド」を直接買う方が得策と言えるでしょう。
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